特殊粘接着・封止材42品目の世界市場を調査
特殊粘接着・封止材42品目の世界市場を調査 -環境対策・省エネ分野向け、最先端半導体向けなどが中長期的に拡大- |
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総合マーケティングビジネスの株式会社富士経済(東京都中央区日本橋 阿部界 代表取締役)は、エレクトロニクス分野を中心に使用される特殊で高性能な粘着剤、接着剤、封止材、接合材料の世界市場を調査した。その結果を報告書「2009年 特殊粘接着・封止材市場の全貌と用途展開」にまとめた。
◆注目市場(世界) (1)太陽電池用封止フィルム
環境問題への高まりから太陽電池事業への投資が盛んに行われたことに加え、欧州のフィード・イン・タリフ制度(固定価格買い取り制度)の見直し前の駆け込み需要があったため、市場は大幅に拡大した。 環境・エネルギー産業を政策的に支援する方針がアメリカや日本などの主要各国から発表されており、太陽電池事業への期待度は世界的に高まってきている。ただし、2009年は世界経済低迷の影響で投資意欲が衰える上、フィード・イン・タリフ制度の適用範囲が縮小し太陽光発電を導入する上でのインセンティブが減少することから、太陽電池市場は僅かに縮小する見込みである。 2010年には世界経済が回復に向かい、太陽電池用シリコンの供給体制も整うと見られることから、太陽電池市場とともに年率2桁以上の成長をしていくと予測される。 (2)先供給型アンダーフィル材(NCP/NCF)
先供給型アンダーフィル材とは、半導体後工程において半導体IC電極とパッケージ基板電極とを金属接合又は圧接接合する前にパッケージ基板上に塗布する(先供給型接合・封止プロセス)封止材である。形状がペースト状のNCP(Non Conductive Polymer)とフィルム状のNCF (Non Conductive Film)がある。 NCPは市場が立ち上がったばかりである。世界的な景気低迷の影響を受けて半導体デバイスメーカーやサブコンといったユーザーの先供給型接合・封止プロセスの導入が遅れたことから、NCP市場の立ち上がりも遅れた。 しかし、最先端フリップチップCSPでは小型・狭ギャップ・狭ピッチ化が進行していることから、連動して今後NCPとNCFの需要は拡大すると予測される。NCP市場は2009年以降年率20%程度の伸び率で拡大、また、NCF市場は2009年に国内から本格的に立ち上がると予測される。 (3)LED用シリコーン系封止材
市場は、主要用途である白色LEDが携帯電話、ノートパソコン、カーナビゲーション等の中小型液晶バックライトに、また、建築照明・街灯へ採用が増えていることから、高い伸び率で拡大してきた。2008年は後半からの世界的な景気低迷による携帯電話や自動車等の大幅な減産の影響を受け、市場の伸び率は鈍化したが、バックライトを中心に各民生電子機器でランプのLED化が進行したことで拡大した。 今後は、液晶テレビ用バックライトもLED化する上、中長期的には一般照明用や車載用でもLEDの採用が進むと期待されるため、2009年以降も市場は拡大すると予想される。 世界的な景気低迷は懸念材料であるが、省エネでメンテナンスフリーなLEDは世界的に推進されている「エコ(環境・省エネ)」の観点から環境対応型デバイスとして有望視されている。LEDの普及に伴い封止材も暫くは高成長を続けると予測される。 (4)タッチパネル用貼り合わせ材
タッチパネルは、カバーパネルとITOフィルム、液晶など、各種の光学部材を貼り合わせた構造であり、貼り合わせ材には、透明性、厚み精度に優れた基材レス両面テープが多用されている。タッチパネルの使用目的、使用部位などに応じて、基材入りの両面テープや粘着ペースト、接着剤なども用いられている。また、アプリケーションによって貼り合わせ方法、厚みが異なる。主成分は、高い透明性と材料設計も容易であることが要求されることから、主にアクリル系が用いられる。 アプリケーションへのタッチパネルの搭載率上昇や、アナログ容量方式タッチパネルの増加に伴い市場は拡大してきたが、2008年は不況の影響を受け微増にとどまった。 2009年の市場は主要用途である携帯電話機市場が低迷しているが、タッチパネル搭載率が上昇していることから2008年に続いて拡大する見込みである。また、パソコンなどの大型ディスプレイへ搭載する動きも強まっていることから、需要は更に拡大すると予測される。 (5)有機EL用シール材
有機EL素子は水分に弱く、パネルは乾燥剤を封入した中空構造が主流となっている。シール材はガラスとガラス(あるいは金属)を貼り合わせ、外部からの水分の進入を防ぐ目的で使用される。一方、次世代の封止方法としてパネル全面をシール材で封止する方式(全面封止構造)が検討されている。全面封止構造のメリットとしては、乾燥剤が不要になることによる低コスト化、パネルの耐衝撃性の向上などがあげられる。有機ELパネルの構造が中空構造から全面封止構造に全面的に移行すれば、市場は大幅に拡大すると期待される。 市場は有機EL市場に連動してこれまで拡大を続けてきたが、景気後退の影響を受け2008年は微減となった。2009年に入ってからも需要の回復は見られず、市場は縮小が続くと見込まれる。以降は、2011年に有機ELテレビ市場が立ち上がり、2013年には有機EL照明市場が立ち上がるとみられるため、市場は徐々に拡大すると予測する。 ◆調査結果の概要 特殊粘接着・封止材42品目の世界市場
2008年の市場は前年比3.6%減の6,563億円となった。景気悪化の影響を受け、ユーザーが急速に生産調整を進めたことから、11月以降需要が大幅に減少した。そのため1~10月の販売数量は前年実績を上回ったものの、通年では前年実績を下回った品目が多かった。2009年は2月頃から一部の品目で荷が動き出しているが、市場を取り巻く環境の厳しさは続いている。また、原料価格の下落を理由にユーザーからの値下げ要求も高まっている。そのため、金額ベースの市場は2008年同様に縮小する見込みである。 一方で好調な品目もある。太陽電池封止フィルムや太陽電池バックシート用接着剤、LED用シリコーン系封止材などの環境・エネルギー分野で使用される品目が2008年に大幅に伸びた。特に、太陽電池関連部材は欧州の固定価格電力買い取り制度変更前の駆け込み需要で、年末にかけて大きく伸ばした。中長期的に大きく成長すると予測される。低迷する半導体分野でも新規技術への投資は絶えず行われており、最先端の半導体に用いられる先供給型アンダーフィル材や一次実装用のハンダボールは伸び率が鈍化したものの、2008年に拡大した。今後も着実に成長すると見られる。また、タッチパネルを搭載するアプリケーションが増加したことで、タッチパネル貼り合わせ材や異方導電性ペーストも拡大した。タッチパネル搭載率は更に高まると見られるため、今後も高い成長率を維持すると予測される。 有機EL用シール材は2008年に前年実績を下回ったが、2011年に量産化されるとみられる有機ELテレビや2013年以降の有機EL照明など、新規アプリケーションの立ち上がりに連動した需要増が期待される。 ◆調査対象
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